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健 康 談 義

連載 第4回目「便 秘」

お話し:株式会社 人間医学社
    薬学士  大 浦 純 孝   プロフィール⇒



「便秘はお肌の大敵です!!」というキャッチフレーズでさまざまな便秘薬のコマーシャルがマスメディアを通して流されているが、じつに現代の女性のうち48%もの人が便秘で苦しんでいるようだ。そのうちの約7割は5日に1回しか出ないほど重症とみられている。どうしてこんなにも多くの女性が便秘で苦しんでいるのだろうか。その答えは簡単ではない。というのも、便秘にいたるキッカケは色々あって、これが唯一の原因ときめることができないからだ。ただ、便秘にいたるいくつかの要因を数え上げることはできる。

第一の原因は、食物、なかでも食物繊維が影響するばあいである。
 昔、といっても60数年前のことだが、太平洋戦争のさなかに米軍が日本軍の露営地跡を調べたことがあった。こういう時は便所跡を調べて、およそどの程度の兵力がいたのかを推測するのが常であるが、そこには大量の便があったことから、米軍は相当数の日本軍の兵力があると推定し、恐れて、その場から撤退したそうである。
 ところが、実際は日本軍の兵力はそんなに多くはなかったのである。当時の日本兵の便の量は400g近くあり、それに対し米兵は150g程度で、現代の日本人のそれと同じくらいであったことから、米兵は米国人の平均的排泄量をもとに計算をして、残されていた糞便量を過大評価してしまったわけである。
 戦争直後の日本人の繊維質の摂取量は1人当たり1日27gであったのが、現在では12gまで減少していることも、現代の我々日本人に便秘で悩む人が増えていることに大きく関わっているのかもしれない、

 繊維質ということで言えば、1日に1kgもの大量の排便をしている民族がいる。それはパプアニューギニアの3,000m級の山地に住んでいる高地民族だ。彼らの食べ物の特徴は、主食はサツマイモ、ヤマイモ、タロイモといったイモ類で、1日に1kg以上の量を食べるようである。卵や牛乳はほとんど食べず、副食としては野菜と少量の豆類が中心で、たんぱく摂取量は日本人の半分以下となっている。
これだけの大量の排便をするのは彼らに特有なものなのかどうか、日本人の調査隊の一員が調べたのである。結果は、彼らと同じようにサツマイモを主食として食べたところ、なんと1kgの排便をみたのであった。
 だからといって便秘の人は正常の人より食物繊維のとり方が少ないともいえないようなのだ。
プレストンとレナード・ジョンソンはひどい便秘の女性58人に規則正しく小麦フスマを食べてもらったが、効果があったのは9人で、他の49人は効果がなかったか、逆にかえってひどくなった、と報告している。
どうしても正常の人よりもよほどたくさんの食物繊維を食べるようにしないと、便の量は増えないようだ。

第二の原因は、腸の筋肉の弱さが考えられる。
 一般的に年をとると筋力は落ちていくものだ。20代の若者と比べれば、70代になるとピーク時の2/3程度になるといわれている。だいたい30才を過ぎると、筋肉は年に1%ずつ減少していくと考えられているが、腸の筋肉の減少率が同じであるかどうかは明らかではない。 ただ便秘を訴える高齢者の腸を調べると、大量の便が直腸に入っていることが多いことからも明らかなように、排泄力が低下していく傾向がある。また大量にたまっていても、それを腸の神経が感知できないこともあるようだ。
 その原因は、下剤を長期にわたって使い過ぎて、腸の神経を痛めてしまったことが関係している。こういう場合、漢方的には腸の気の流れが悪いとして、「麻の実」というものを使うことがある。これをもってしても今一つという時は「麻子仁丸」をプラスしてもらっている。この「麻子仁丸」、老人だけではなく、子供の便秘にもよい。その場合には大人の1/3の量で十分である。

 ところで、筋肉に関してであるが、年をとるとほとんどの場合、あまり運動しなくなってくる。それによって筋力が低下し、腸の筋力も低下して便をスムーズに送り出していくことができなくなっている。
 人間は動物、すなわち動くものである。生きている限り動かなくてはならないようにできている。そもそも脳神経系からして、エサを求めて動き、採取し、蓄える必要から発達してきたものである。
「筋肉なくして神経なし」という言葉があるが、動かなければ脳神経系は必要なくなるわけで、正常な排便のための神経反射もなくなるのだろう。

第三の要因としては、食べ過ぎ、それも甘い物の摂り過ぎが考えられる。
 ところで、女性の方が相談にみえられると、必ず便秘の有無を尋ねるのだが、多くの場合、便秘を訴えられるのである。 女性は夫の世話や、子供を学校へ送りだしたり、家事のこまごまとした用事で、ついトイレに行くのを我慢したりすると、排便反射が消えてしまって(便に含まれる短鎖脂肪酸で直腸の壁が刺激されることで排便反射が生まれるが、その刺激は短時間しか続かない)、それが習慣化して便秘症になってしまうことがある。 これは主婦に限らず、若い女性も我慢することが多いようだ。
 こういうケースは排便しようとする時に肛門をとり巻いている筋肉をゆるめられないことも影響している。
 直腸の出口のまわりは開け閉めをきちんと行えるように筋肉や神経、血管がより集まった複雑は構造をしている。なかでも筋肉は二重にとり巻く構造で、内側の内肛門括約筋と外側の外肛門括約筋からなっている。
 外肛門総括筋は腕や脚の筋肉と同じような骨格筋だから縮めたり、ゆるめたりできる。しかし、内肛門括約筋は腸の壁にあるのと同じ平滑筋で、いくら気合いを入れても縮めたり、ゆるませたりはできない。この筋肉、自律神経が支配しているからだ。
 こういうタイプの便秘は、いきむと、かえって肛門のまわりの筋肉が収縮して、肛門が閉じてしまうので下剤や浣腸があまり効かないのである。むしろ自律神経を調整し、便通を整える働きのある桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)とか小建中湯(ショウケンチュウトウ)といった漢方薬が有効である。

 さて、甘い物のとり過ぎについても触れておかなければならない。
女性は甘い物好きの人が多いが、三度の食事とは別に口寂しくなると、つい甘い物に手をだしがちである。こうしていつも何かを口に入れている人は、便秘傾向をもっている。普段は便通がスムーズにある人でも、ストレスがあって、それを紛らわせようと甘い物を食べ過ぎてしまうと、すぐさま便秘を起こしてしまうものである。
もともと糖分はエネルギーに変換されなければ、体にたまってしまうという厄介な性質がある。脂肪に変換されて内臓脂肪としてたまっていくが、血中の中性脂肪値として上昇をもたらすのだ。もちろん血糖値の上昇につながり、血中のタンパク質と結合して、大切な酵素などの働きを失わせてしまうのである。いわば糖毒症状をもたらすのだ。

 糖分を摂り過ぎると、それを細胞にとり込んでエネルギー化する仲立ちとなるべきインスリンというホルモンに反応しなくなってくる。つまりインスリン抵抗性をもたらすことになるわけだ。こうなると膵臓からせっかく分泌されたインスリンも血液中をウロウロするだけで、役に立たなくなる。そればかりか高インスリン血症となり、交感神経を活性化するため、血圧が上昇し、排泄反応が妨げられることになる。こうして便秘を引き起こしてくるわけである。

 現代人は昔の人に比べて、消費エネルギーが極端に減っている。それは電化製品が家庭の中に占める割合が急速に増えたこととか、移動手段が便利になったことなども関係するが、なによりも一番の問題は体温調節が関係しているのだ。
 夏でも冬でも、どこにいても空調がよく効いているために、自らの肉体を使っての体温調節をしなくてもよくなったからである。今では夏の暑さに汗を滝のように流しながら働くことも、冬の寒さに凍えながら寝ることもほとんどなくなった。

 我々はこうして暑さ寒さに耐えることなく、快適な生活空間で暮らすことによって、糖分の害をもろに受けやすくなってしまったのである。糖分摂取というものは甘い誘惑だけにコントロールがきかない。それだけに、現代人はよほど注意しなければならないのである。

第四の要因としては、腸内細菌の問題が考えられる。
 腸内細菌には善玉菌と悪玉菌があり、善玉菌を増やすと便通がよくなり、免疫力などもアップするといった話しが一般の人たちの中でもしばしば交されているようである。ただ腸内の細菌のほとんどは人間に無害であり、我々の健康に役立っている細菌が多く含まれ、悪さをする細菌は通常はほとんどないことは確認しておきたい。  さて、善玉菌といわれる細菌は、共通して酸素を嫌う。つまり嫌気的状態を好むようである。また善玉菌は低級(炭素数が少ないという意味)脂肪酸を産生して、腸の中を酸性にする。
 これに対して悪玉菌はそれほど酸素を嫌わず、腸内でアルカリ成分を分泌する。このアルカリ成分の中にはアンモニア、インドール、スカトール、ニトロ化合物など有害物質が多く、大便のいやな臭いもこのアルカリ物質のおかげである。
 しかし、善玉菌が優勢で酸性物質を多量に産生すると腸内が酸性になるため、悪玉菌の産生するアルカリ性の毒素は水に溶けて排泄されてしまい、クサイ臭いはしなくなる。
 ところで善玉菌が産生する低級脂肪酸には酢酸、プロビオン酸、酪酸、乳酸などがある。なかでも酪酸や乳酸などは腸粘膜細胞を豊かに増殖させる作用がある。とくに酪酸はその作用が強いようだ。
 こうして豊かに増殖した腸の粘膜細胞は沢山の栄養分を分泌するが、じつはこれが善玉菌の栄養源になるのである。つまり腸の粘膜細胞と善玉菌は持ちつ持たれつの関係にあるわけだ。
そのためストレスが過剰にかかると、腸粘膜細胞を養っている血流が減少し、腸の粘膜細胞が活力を失い、分泌する栄養分が減ってくる。ほとんどゼロになることもあるようだ。こうなると腸内細菌の活動が抑制されてしまい、便通が悪くなってしまうのである。
 腸内細菌は環境細菌、または土壌細菌といわれている。現代人の腸内細菌が不足がちなのは、生活をとりまく環境に土がなくなったことが大いに影響している。生活環境ということでいえば、電子レンジと腸内細菌との関係についても考えておくべきだろう。
 昔、米国で電子レンジが一般家庭に普及しだした頃「電子レンジ病」という病気が流行した。この病気は下痢、脚気、頭痛、だるさ、精力不足、アトピーなどの症状を起こすというものだ。専門家が色々と調査してわかったことは、このような症状を起こす人は電子レンジで調理したものを多く食べていること、そしてその人たちの腸内細菌叢が破壊されていたとう二点であった。
 食事とともに体内に入るはずの細菌が電子レンジによって殺され、腸内細菌の補充が途絶えたために起こった病気だったようである。というのも、腸内細菌は通過菌で、絶えず外から補充しないと涸れてしまうからだ。昔は電子レンジもなく、土にまみれた生活をしていたので、腸内細菌がいつも補充されていたことが幸いしていたのである。電子レンジは便利だが、思わぬ落とし穴があることを心して利用すべきであろう。

 善玉菌についても、あまり知らされていないことがある。一般に善玉菌と言えばビフィズス菌を代表とする乳酸菌が有名だが、これは食べても腸管にたどり着く前に胃液によってかなりが分解されてしまう。その点、納豆菌や酪酸菌は芽胞菌といわれ、非常に胃酸に強い細菌であることから、飲んだ菌のほとんどはそのまま腸に行って、腸で有用な働きを発揮してくれるのである。  なかでも酪酸菌の働きはめざましいものがある。何よりも大腸粘膜のエネルギー源は酪酸菌が作る酪酸であるからだ。というのも、大腸をはじめとする消化菅粘膜というのは、やたらとエネルギーを消費する細胞なので、血液が運んでくるブドウ糖ではとても足りず、大腸内の細菌がつくっている酪酸を吸収して、体の他の部分には使わせないで、そのまま自前のエネルギー源として利用しているのである。  大腸の粘膜細胞にとって酪酸のエネルギーは貴重で、これがないとエネルギー不足で、ナトリウムや水吸収がうまくできないのだ。  たとえば、抗生物質を飲むと下痢を起こしやすくなるが、これは抗生物質によって大腸内の細菌が減ってしまい、酪酸ができなくなるため、水を吸収できないから水様便になるのである。  さらには、腸内の細菌によるアンモニアやアミン類の産生を顕著に阻害する働きが酪酸菌にはある。アンモニアやアミン類は腸管から吸収されると、肝機能に悪影響を及ぼすことでしられているものだ。そのため肝臓病には酪酸菌を処方する医者もいる。  また、酪酸菌はそれ自体が有用菌であるとともに、他のビフィズス菌などの腸内有用乳酸菌の増殖促進作用があり、優れた整腸作用をもっていることから、整腸剤として医薬品にも利用されている。ミヤリサンBMやビオスリーなどがそうだ。

 長年の便秘症をそのままにしておくと、腸のポリープや大腸ガンといった厄介な病気を引き起こしてくることがあるが、こういった病気が発生しやすい場所というのがある。それは便が滞留する時間の長い所、つまり便と腸が接触する時間が長い所、すなわち大腸の下部だ。この大腸の下部に働くのが酪酸菌なのである。ちなみに納豆菌は小腸上部に、乳酸菌は小腸下部に働くとされている。
 大腸ポリープや大腸ガンが激増している現在、これらの発生を抑制する酪酸菌はもっと注目されても良い有用菌だと思う。

最後に便秘薬である下剤について少し述べておきたい。
 多くの人は便秘になると、すぐに下剤に手を出しがちである。病院に行くと細かい生活上の注意をアドバイスすることもなく、簡単に下剤が処方される。しかし、漢方薬などにも使われているセンナとか大黄といったものを長期間使用していると、腸の粘膜が色素沈着を起こすことがある。また連用しているうちに、含有するタンニン(収斂作用がある)のせいで、逆に便が硬くなり、服用量を増やさないと出なくなったりする。そこで、こうした刺激性下剤でなく、大腸からの水分の吸収を抑えるだけのマグネシウム剤(水酸化マグネシウムや酸化マグネシウム)などを利用されたほうが腸には優しいし、クセになりにくいのでおすすめしている。

 健康食品では78種類の天然ミネラルがイオン状態にある。“グレイトミネラル”というマグネシウム主成分マルチミネラル濃縮液を料理とか飲料水に利用してもらっている。
 このマルチミネラル濃縮液はアメリカ、ユタ州にあるグレイトソルトレイクという塩水湖で採水されたものを、太陽の光と熱でより濃縮させ、塩の結晶を取り除いてミネラル分だけを取り出したものである。
 1mlで100mgのマグネシウムを補給できるため、便秘とか不整脈、高血圧、関節痛、ギックリ腰、上まぶたのケイレン、生理痛、疲労感、偏頭痛、コムラ返りなどに使ってもらっている。

血液循環の改善方法を紹介しておきたいと思います。
 ドライアイをはじめとして、白内障や緑内障の人の眼底を診ると、血液がスムーズに流れていないことが確認されるそうです。
 そこで目の病気や症状に対して、眼窩(がんか)の周りの骨を指で押して血行を促す方法がすすめられています。ここで注意すべきは、絶対に眼球そのものを押してはいけないということです。
 骨のふちを軽いタッチで、上側は親指の腹で、下側は人差し指の腹で刺激します。目頭から目じりにかけて、目の周囲を少しずつなぞるようにして、5秒ほど押して、パッと離す運動をくり返します。この運動をお昼の適当な時間と、夜寝る前の2回行います。
 押すことで毛細血管の血液が周囲へ押し出され、離すことで、そこにまわりから血液が流れ込んでくることによって血液の流れを改善していくわけです。
 目の血液循環については首筋のコリもかなり関わっています。首筋といっても特に中央部、それも右目が調子悪い時は右首筋中央部、左目が悪い場合は左首筋中央部が非常にコッていることが多いのです。そのコリをゆるめるには、例えば右首筋がコッていれば、その部分をマッサージし、体も右足の方へ曲げ、体軸を右へ戻す体操をします。さらに右腰部にキネシオテープなどを貼ると良いでしょう。背筋のコリが肩のコリになり、首のコリにつながっているからです。その原因は体重のかけ方の偏り、姿勢に問題があるのです。さらにいえば心のクセが姿勢を歪めているのだと思います。

                        つづく

「健康談義」についてのご質問やお問い合わせは、
「人間医学」http://www.ningen-igaku.co.jp/ までお願いします。




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