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有頂天(うちょうてん)

画像(須弥山図)提供:東京国立博物館

 「あいつ、有頂天になっているよな」
 ある人が、何か調子がよくて、得意になっていることを、有頂天と言います。
 この有頂天ですが、もともとは、仏教の世界観が元になっている言葉です。
 仏教では、我々のような、迷いの存在である衆生が生きている世界を「三界」と言います。三界は、下から欲界(よっかい)、色界(しきかい)、無色界(むしきかい)の3つの世界に分かれています。
 一番下の欲界は、さらに地獄、餓鬼(がき)、畜生、修羅(しゅら)、人、天の六道(りくどう)にわかれています。私たち人間は、この色界の中で、食欲や性欲、睡眠欲などの欲から逃れることはできず、六道を輪廻し、生まれ変わり続けているのです。
 色界は、欲界の上にありますが、欲望は乗り越えたものの、物質的なものにとらわれている世界です。
 そして三界の最も上にある無色界ですが、欲望からも、物質的なものからも解放された世界だと言われています。この無色界はさらに、空無辺天(くうむへんてん)、識無辺天(しきむへんてん)、無所有天(むしょうてん)、非想非非想天(ひそうひひそうてん)の4つの世界があります。
 そして無色界のいちばん上にある非想非非想天のことを、この三界の最高の場所であり、「頂点に有る」ということから「有頂天」と呼ぶのです。
 ちなみに欲界で、人のひとつ上にある天ですが、この天はさらに9つの世界にわかれていると言われています(6つという説もあります)。天の中で最も高い場所を九天と言いますが、ここから落ちることを「九天直下」といい、これが変化して「急転直下」(物事の事態や情勢が突然に変化して、解決・結末に向かうこと)という言葉が生まれたという説もあります。
 有頂天は、生きとし生けるものが、たどり着くことの出来る最高の場所でありますが、そこに至ることは簡単ではありません。ただ私たちにとっては、日々精進し、その有頂天を目指す気持ちが大切なのです。

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