利益(りやく)
「利益」という言葉は、一般的には「りえき」と読みますが、仏教では「りやく」と読みます。これももともと仏教の言葉で、仏さまや菩薩さまが、私たちに恵みを与えること、それによって得られる幸せのことを言います。
お寺にお参りする時に、「ごりやくがありますように」と手を合わせる、というような使い方をします。
「りえき」は、経済的な儲けのことを言いますが、「りやく」は、人生の全てに関わる恵みであり、幸せや救い、安らぎなどを表します。
また「りやく」は、この世で得られるものだけではなく、あの世で得られるものもあります。仏様を祈り続けることで、自らが死んだ時に、成仏できる、極楽往生できる、あの世で安らかでいられる、といった「りやく」です。
この世で得られる「りやく」と「現世」という言葉と組み合わせて、「現世利益(げんぜりやく)」という言葉の使い方をすることがしばしばあります。例えば、家内安全、商売繁盛、恋愛成就、試験合格といった具体的な「りやく」のことを言います。
こうした日常的な「りやく」のことを、目先の事を願う、利己的な願いだと否定的に捉える人もいるようです。
しかしどんな願いであっても、神仏の前で「りやく」を求めて祈ることは尊いことです。日々、仕事に生活に努力を積み重ねて、その努力が報われたい、と思う気持ちは、自然なことです。
努力して、そして祈り、その結果として得られるのが「りやく」なのです。
それは願いがかなうことだけじゃありません。たとえ願いが叶わなくても、頑張った経験や達成感、それも「りやく」であります。神仏の前で手をあわせるということで、人は謙虚な心持ちになることができます。それも「りやく」です。
もし謙虚さを忘れて「りえき」だけを求めるようになってしまったら、もはや「りやく」を得ることができないでしょう。
心清らかに、仏さまに祈ることでこそ、「りやく」は得られるのです。