バカボン
「バカボン」という言葉を聞くと、ある一定年齢以上の人は、『天才バカボン』というアニメドラマを思い出すと思います。特に番組の最後のほうで毎回、主人公のバカボンの父親(バカボンパパ)が唱える(?)、「これでいいのだ」というセリフは、何十年たっても忘れることのない印象的な言葉です。
仏教にも「バカボン」という言葉があります。漢字では「婆伽梵」あるいは「薄伽梵」と書き、インドの古い言葉であるサンスクリット語の「Bhagavan(バガヴァーン)」「Bhagavad(ヴァガバッド)」が語源となります。意味は、「尊い仏」「悟れる人」のことを意味しています。
『天才バカボン』の原作者である赤塚不二夫は、『ひみつのアッコちゃん』『おそ松くん』なども書いた、昭和を代表する漫画家のひとりです。
コメディアンのタモリを、無名時代に見いだし、芸能界にデビューさせたのも、赤塚だと言われています。赤塚が亡くなった時、タモリは葬式で弔辞を読みましたが、手に持った巻紙が白紙であったことが話題になりました。その弔辞の最後の言葉が「私も数多くのあなたの作品のひとつです」であったのも印象的でした。
赤塚は、シュールでドタバタのギャグ漫画を得意としていますが、作品は、広く日本人に愛され続けました。特に、『天才バカボン』は、五回にわたってアニメ化され、広い年代の記憶に残っています。
主題歌の「西からのぼったお日さまが、東に沈む。これでいいのだ、これでいいのだ。ボンボン、バカボン、バカボンボン」という歌詞は、あまりにも有名です。
「これでいいのだ」は、毎回番組でバカボンパパが唱える言葉ですが、「バカボン」が仏教語だという理解から、「これでいいのだ」という言葉も、仏教的に解釈されるようになりました。実は、「存在をあるがままに受け入れる」というお釈迦さまの悟りの境地を語っているという解釈です。僧侶や仏教学者までがこの言葉に触れており、もはやバカボンパパは、我々現代人を導く菩薩に見えなくもありません。
「これでいいのだ」という言葉の味わい深さが、人々に仏教的なインスピレーションを与え続けているのです。「バカボン」だけなく、「これでいいのだ」も仏教の言葉だと解釈しても過言ではないでしょう。