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はじめてのお墓参り

ある晴れた日、泉ちゃんは、お父さんと二人で、寳泉寺にお墓参りに来ました。お寺に来ると、お墓のお掃除をして、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに手を合わせました。
「おじいちゃん、おばあちゃん、元気ですか? いずみは、元気です。おかあさんとおとうさんの言うこともちゃんと聞いて、いい子にしています。勉強しろって、いつも言うので、時々、口ごたえもしちゃうけど。でも、おじいちゃんとおばあちゃんが、心配しないように、もっともっといい子になるね。また、会いに来るから、寂しがらないでね」
お父さんは、ちゃんと手を合わせている泉ちゃんの頭を撫でながら言います。
「いい子だ。それならお祖父ちゃんもお祖母ちゃんも安心だ。いつも見守ってくれるようにもお願いしておきなさい」
「うん、いま、それもお願いしてたとこ。またおじいちゃんとおばあちゃんに会いに来ようね」
「うん、また来ような」
お父さんは、そう言って境内を歩き始めました。

すると、泉ちゃんが、ひとつの銅像を指さして聞きます。
「お父さん、この人はだあれ?」
「この人はね、今から750年くらい前の人で、瑩山禅師(けいざんぜんじ)という人だよ。道元禅師(どうげんぜんじ)という偉いお坊さんがいてね、その人は、中国で禅の勉強をして、日本に帰り、禅の教えを説いた人なんだ。この道元禅師が説いた教えを曹洞宗(そうとうしゅう)と言うんだけど、瑩山禅師は、その教えを、ほんとうにたくさんの人に広めた人なんだよ。だからね、この寳泉寺も、瑩山禅師がいたから、いまここにあると言ってもいいんだよ」

「へ~、じゃあ、おじいちゃんやおばあちゃんのお墓参りができるのも、瑩山禅師のおかげなんだね」
「そうだよ、よくわかったね。それじゃあ、あの石でできた碑を見てごらん。難しくて読めないかな?」

「なんて書いてあるの?」
「『顕彰 曹洞宗大本山總持寺御直末元輪番地』と書いてあるんだ。意味はね、總持寺(そうじじ)って立派なお寺が横浜の鶴見というところにあるんだけど、この寳泉寺がそこの子どものお寺だということなんだよ。總持寺は、さっき言った瑩山禅師が開いたお寺で、永平寺(えいへいじ)とならんで曹洞宗の本山なんだ。この曹洞宗には、お寺が15,000くらいあって、この總持寺や永平寺から、子どものお寺、孫のお寺、ひ孫のお寺と、つながっていたんだよ。それでね、總持寺の子どものお寺というのが『直末(じきまつ)』と言って、この15,000のうち、160しかないんだ。寳泉寺は、このたった160しか無い子どものお寺のひとつなんだよ」

地獄道
餓鬼道
畜生道
修羅道
人 道
天 道

「すごーい、15,000のうちの160のひとつなんだ!」
泉ちゃんは、両手をあげて驚きました。

お父さんは、また歩き始めます。
泉ちゃんは、お父さんの話を聞いて楽しくなってきました。そして、今度は、お地蔵さんを指さします。
「ねえねえ、お父さん。ここのお地蔵さまは、なんで6人もいるの?」
「そうか、泉ちゃんも、好奇心旺盛になってきたな。お地蔵さまが、どんな方だか知っているか?」
「道ばたとかで、赤いよだれかけをしている仏さまでしょう」

「うん、その通りだ。正確に言うと、『仏(ほとけ)さま』じゃ無くて、『菩薩(ぼさつ)さま』だけどな。『菩薩さま』は、『仏さま』になれるだけの悟りを得ているんだけど、あえて『仏さま』にならずに、人間と一緒になって歩みながら、人間を救ってくださるお方なんだ」
「へ~!」
「昔な、インドに2人の王さまがいてな、2人とも、とっても慈悲深い王さまだったんで、1人は『一切智威如来』という仏さまになったんだ。で、もう1人の王さまも、仏さまになる力があったんだけど、あえて、仏さまにならずに地獄に行って、地獄に堕ちた人たちを救おうとしたんだ。それが、お地蔵さまなんだ」
「へ~、お地蔵さまって偉いんだね。地獄の人を救おうとして、地獄に行くなんて」
「そうか、お地蔵さまのすごさがわかるか」
「馬鹿にしないでよ。わかるわよ」
「それでな、地獄の他にも人が死んだら行くところがあってな、地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人道、天道と全部で6つあるんだ。この6つに、それぞれお地蔵さんがいらっしゃってな、そこにいる人を救おうとしているんだ。だから、ここのお地蔵さまは6人いるんだ」
「そうなんだ。じゃあ、どこに行っても、お地蔵さまが救ってくださるのね」
泉ちゃんは、お父さんの話を聞いて、なぜだか安心した気持ちになりました。