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寳泉大仏

お父さんといっしょに本堂を出ると、泉ちゃんはまたキョロキョロしはじめました。
そしてまたお父さんに話しかけます。「お父さん、また聞いていい?」
「なんだい?今日は質問攻めだなあ」お父さんもタジタジです。
「あのね、あそこにいらっしゃる大仏さまなんだけど・・・。大仏さんって、いったい誰なの?」
「大仏さんかあ。ここの大仏さんは、お釈迦さまなんだよ」
「へえ、じゃあさっき本堂にいらっしゃった仏さまと同じだね」。

「そうそう、ここのお寺の宗派の曹洞宗では、お釈迦さまが中心なんだ。だからここの大仏さまもお釈迦さまなんだよ。ほら、こっちへ来て、ちゃんと手を合わせなさい」
「はあい」
「それから、さっき本堂で唱えたことばは何だったっけ?」
「ええと、なむ・・・、なむしゃかむにぶつ」
「そうだ、正解!じゃあお父さんと一緒に!」
「なむしゃかむにぶつ」
「南無釈迦牟尼仏」

泉ちゃんは、目を閉じて、手をあわせます。「えらいぞ。次にここに来ても、ちゃんとできるかい?」
「うん、ちゃんとできるよ。ところで、この大仏さまって、どのくらいの高さがあるの?」
「高さは10メートルあるぞ。泉ちゃんの7,8倍くらいはあるかな。それで体重は8トンもあるって」
「8トンって言っても、どのくらいかわかんないよ」

「そうだな。とにかく、重いってことだ。この大仏さまはな、青銅っていう金属でつくられているんだよ。ご住職さまのお話じゃ、中国でつくって持ってきたらしい。実際につくったのは、たしか中国の大学で仏像を研究している偉い先生たちが中心となった芸術家集団なんだって」
「ええっ!中国で!すごい」
「すごいだろ」
「へえ~。さっき本堂にいらっしゃった達磨さまも中国の人だよね?」
「そうだよ、道元禅師も中国で修行をしているしね。仏教と中国は関係が深いんだ」

「そうだ、泉ちゃん。ちょっと大仏さまの手を見てごらん」
「なんか、変わった手つきをしているね」
「そうそう、こういう仏像の手振りにはみんな意味があるんだよ。特にここの大仏さんは、左手が特徴的なんだ」
「特徴的?膝の上に乗せていることが?」
「そう、日本では、こういう手振りの仏さまはあまりいないんだ」
「ふうん」
「普通はな、左手は手のひらを上に向けている大仏さんが多いんだ。それは、左手ですくいとるような手振りが、この世界の人々を救うということを象徴しているんだって。ところがこの大仏さんは、手のひらを下に向けているだろ。これは、手のひらで邪悪なものを押さえ込むということで、下を向いているんだそうだ」

モデルは中国の仏像

「へ~、そんな意味があるんだ」
「こういう手のひらを下に向けている仏さまは、中国に多いんだ。それでこの大仏さまには中国にモデルとなった仏像があるんだって。洛陽(らくよう)に竜門石窟群というところがあるんだけど、そこの奉先寺石窟に建立されている仏さまがモデルなんだよ。それでね、その竜門石窟群というのはね、世界遺産に登録されているんだよ」
「ここの大仏さま、すごいんだね」
「そうだよ、とても由緒のある大仏さまなんだ」

「それとね、お父さん。前から聞きたかったことがあるの」
「はいはい」
「あのね、仏さまの頭なんだけど、なんかパーマをかけているみたいじゃない。それは何でなの?」
「そうだな。あの髪型は、ちょっと不思議だな」
「そうでしょ」
「仏さまっていうのは、『悟り』というものを得て、この世界の真理を理解しているんだけど、その『悟り』を得ると、姿形にいろんな特徴があらわれるんだって。そのひとつがあの髪型なんだ」

「『悟り』を得た人のしるしなの?」
「そうなんだよ。螺髪(らはつ)といって、よく見ると、ひとつひとつが巻き髪になっているんだ」
「ふ~ん、そうなんだ。よかった、聞くことができて。前から気になっていたんだ、仏さまの髪型」
「大仏さまを見る目が変わったろ。ほら、もう一回、ちゃんと手を合わせよう」
「うん、なむしゃかむにぶつ~」
泉ちゃんとお父さんは、大仏さまの正面に戻って、あらためて手を合わせました。