1. HOME
  2. 寳泉寺境内探索
  3. ご本尊様にごあいさつ

ご本尊様にごあいさつ

 「じゃあ、おじいちゃんとおばあちゃんにご挨拶したから、今度は仏さまにご挨拶だ」、お父さんは泉ちゃんに言いました。
「うん。でも、仏さまって誰なの?神さまみたいな人?」 泉ちゃんの質問に、お父さんはとまどってしまいます。

「う~ん、難しい質問だな。確かに、泉ちゃんが言うように、神さまみたいと言えば神さまみたいだけど・・・。でもな、仏さまというのは、人間なんだよ。うんとうんと昔にな、インドにいた偉いお坊さんなんだ。シッダールタと言ってな、もともとは釈迦族という人たちの国の王子さまだったんだよ。それが、ある時、世の中の苦しんでいる人たちを救いたいと思うようになって、自分の城を出て、お坊さんになったんだ」

「え~、王子さまなんでしょ。もったいない。あたし、王子さまにあこがれているのに~」
「そうだな、もしお父さんも王子だったら、やっぱり王子は辞めないなあ」
「そうでしょ、それでお父さんが王さまになったら、あたしは王女さまなのよ」
「でも、そこが仏さまの偉いところで、贅沢とか、そういうものに興味はなかったんだな。ただ、お坊さんになったけれど、シッダールタ、つまり仏さまは、なかなか自分で望んだようなお坊さんにはなれなかったんだ。でも、何年も苦労しているうちに、ようやく悟りを開いたというんだ」
「悟りって?」
「困ったな、泉ちゃんにはかなわないな。お父さんも、そんなに詳しくないんだ。なんて言えばいいかな。この世界の全てを理解すること、という感じかな。これ以上は、ちょっとうまく説明できないよ。後で、お寺の住職さんに聞いてみようか」
「お父さんも、わからないんだ。ふ~ん」
「とにかく、シッダールタがその時、この世界の真理を理解したことや、救われる方法なんかを、いろんな人に教えるようになって、仏教というものができたんだよ。仏さまというのは、仏陀という言葉から来ているんだけど、これはインドの言葉で、悟った人という意味なんだ。ほらごらん!」
二人はちょうど、本堂の前まで来ました。そしてお父さんは、泉ちゃんの手を引っ張って、本堂に入っていきます。

「あの真ん中にいらっしゃるのが仏さま。釈迦如来とも言うんだ。ほら泉ちゃんも、手をあわせなさい」
「は~い」
「それからな、お父さんと一緒に、こう言うんだ。『南無釈迦牟尼仏』、はい」
「なむしゃかむにぶつ」
「よ~し、いい子だ。仏さまが、きっと泉ちゃんのことを見守ってくれるぞ」

達磨大師
大権修理菩薩

「仏さまの両側にも、誰かいるね」
「左側にいらっしゃるのが、達磨大師という方。達磨さんだ」
「ダルマさん? あのダルマさん?」
「そうだよ。あのダルマさんだ。達磨大師は、インドで生まれて中国で活躍したお坊さんだ。達磨大師は、禅宗を開いた人なんだよ。泉ちゃんも、坐禅というのを知っているだろ」

「黙って座って、後から叩かれるやつ?」
「そうそう。座りながら、気持ちを調えていく修行なんだけど、仏教の中でも、その坐禅を大切にする流れを禅宗って言うんだ」
「ふう~ん」
「達磨大師はな、とても厳しい人で、崖に向かって9年も坐禅をしていたらしいんだ。そしたら、ずっと座っていたせいで、手足が腐ってしまったというんだ。あのころころ転がるダルマさんは、この話がもとになってつくられているんだよ」
「9年も!すごい人なんだね、達磨さん」
「この達磨大師が開いた禅宗が、日本に伝わって曹洞宗になって、そしてこのお寺にまで繋がっているんだ」

「じゃあ、こっちの人は誰なの?」
「右側に祀られているのが、大権修理菩薩(だいげん・しゅり・ぼさつ)。道元禅師という人の話をしたろう。その道元禅師が中国から日本に帰る時に、航海の安全を見守ってくれたというんだ。だからほら、左手が目の上のところにあるだろう。道元禅師が港を出ていくのを、手をかざして見守ってくれているんだ。私たちのことも見守ってくれているんだよ」

「ふうん、いろんな人たちが、私たちを守ってくれているんだね」
「ほら、ここに来たらちゃんと手をあわせるんだよ」
「は~い」
泉ちゃんは、興味津々で本堂の中をきょろきょろしていましたが、お父さんに言われて、素直に手を合わせました。