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健康に生きる

お話し:薬学士 大浦純孝(株式会社 人間医学社)

 酸素と栄養がなければ生きていけないことは誰でも知っている。それは酸素と栄養がエネルギーを生み出しているからだ。じつはエネルギーを効率よく生みだすには、さらに温度と光が必要なのである。
 ところで、生きて活動するにはエネルギーが欠かせない。しかし、現代医学はこのエネルギーの問題をあまり重視してこなかった。
 日本人は水と空気はタダという感覚できたが、ここにきて米国やオーストラリアの穀倉地帯の深刻な水不足、中国の大気汚染の影響など、他国の水や空気も視野に入れなくてはならなくなってきている。
 エネルギーの問題もこれまで当たり前のように取扱ってきたが、じっさいは当り前に得られるのではなく、日常の生活習慣の如何によって、十分に得られることもあれば、かなり不足することもあるという事実を考慮しなければならなくなってきている。
 ところで我々の身体のエネルギー代謝を司るのはミトコンドリアという細胞内にある小器官だ。赤血球以外の全ての細胞の一つ一つに800~3,000もあって、ATPというエネルギー物質をつくるとともに、サイトカインや脳内ホルモンといった特殊なものをつくっている。
 ここで忘れてはならないのは、全てのビタミン、全てのミネラルと必須アミノ酸の全て、必須脂肪酸、水、酸素、そしてブドウ糖を分解したピルビン酸がエネルギー物質をつくるには欠かせないということだ。
 しばしば栄養の基本は?と問われると、バランスの良い食事が大切という答えがでてくるが、それはエネルギーを生みだすには全ての栄養が過不足なく必要だという意味でもある。
 健康の問題はエネルギー抜きには語れないのだが、どういうわけかエネルギーについては、日本人にとって水や空気があるのが当たり前であると考えているように、当然そこにあるものとして忘れさられている。
 西原克成先生は「健康の基本は60兆個の全ての細胞内のミトコンドリアが疲れないようにすることです」と述べられているがまさにエネルギーの問題はミトコンドリアの問題となるのである。
 前置きが長くなってしまった。健康で長生きしようと思えば、エネルギーの無駄使いを止めることから始めなければならない。
 現代社会のエネルギー事情も、石油資源をめぐる各国間の思惑によって新たな冷戦構造まで形成されようとしている。バイオエネルギーに代表される代替エネルギーの開発は穀物メジャーの戦略にうまくのせられて穀物不足を生みだしてしまった。
 今後はエネルギーの節約をはかることが何よりも大切だということで、世界中の人々が真剣に取組み始めだした。人間が社会を構成するわけだから、社会事象も人間の営みも同じ道を歩むことになるだろう。
 では具体的にはどうすればよいのだろうか。

少食を心掛けること

100歳を超えてもかくしゃくとして人生を楽しんでいる人がいる。その人たちの若さの秘訣はカロリー制限と運動にあることが百寿者を対象とした研究の中で明らかになった。じっさい寿命を伸ばすのに役立つ方法で科学的根拠が明らかにされているのはカロリー制限しかないといわれている。
 古くは1934年米国コーネル大学のクライド・J・マッケイ博士の実験がある。ネズミを二群に分け、一方には腹いっぱい食べさせ、他方は腹六分目に抑えて飼育した。その結果、腹六分目の群のほうが、腹一杯の群より平均寿命が二倍近くまで延びたのである。
 その後、NIH(米国立衛生研究所)の加齢研究所は、サル60匹を使って実験を行った。30匹ずつ二群に分け、一方には腹いっぱい食べさせ、他方は腹七分目にして飼育した。15年後の結果は、腹七分目の方は腹いっぱい食べさせた群に比べて、死亡率が半分に抑えられたのである。
 この少食群のサルには特徴があった。それは「低体温、血中のインスリン濃度が低い、DHEA―Sが減らない」の三つである。
 少食の場合は入ってくるエネルギー源が少ないのだから、体温は低いだろうという予測は立つ。だが血中インスリン濃度が低いことにはどんな意味があるのだろうか。じつは百歳以上のひとに糖尿病の患者はほとんどいないことが知られている。
 食べ過ぎ、それもブドウ糖の過度の摂取は膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンをたくさん放出させることになり、それが長年に亙るとβ細胞を疲弊させてしまう。つまり糖尿病を招いてしまうということだ。
 血液中のインスリン濃度が高いということは高インスリン血症となり、腎臓の濾過機能を阻害する。すなわち体内の不要なナトリウムを捨てられなくなるので、高血圧を招く。またインスリンは交感神経を刺激して血圧を上げる作用もあるのだ。濾過に関していえば、尿酸の排泄も阻害される。尿酸がたまり過ぎると痛風になるわけだが、高インスリン血症は高尿酸血症を招き、腎臓も傷めてしまうのである。
 “人は血管と共に老いる”というが、血管の老い、つまり動脈硬化はコレステロールが原因をされている。だが、どうしてコレステロールが血管に付着して動脈硬化が進むのかについては、いまだ諸説があり、確実なところは分っていない。
 その中で米国発の「細菌感染による炎症(血管の)が原因では」という説はなかなかユニークで、気に入っている。
 動脈硬化、それも心筋梗塞を起こすほど動脈硬化が悪化している患者の血液中にはCRPというタンパク質が異常に増えている。もともとCRPは血液検査の中で炎症反応をあらわすものだが、心筋梗塞が疑われる時にも高く出てくるのだ。こういうことだ。血管の壁に悪い細菌がつき、食い荒らして傷をつくる。それを修復しようとして血液が集まって、そこに血管修復の原料となるコレステロールがくっついていく、それが動脈硬化であるという考えだ。
 糖尿病があると動脈硬化が起こりやすいという事実からすれば、細菌感染による血管壁の炎症が動脈硬化を引き起こすという図式がみえてくる。なにしろ菌が最も好物としているのは糖であるからだ。
 炭水化物や甘いものを毎食、たっぷり食べている人は血液中に糖が多く、内臓脂肪も増えてインスリン抵抗性が起きて高インスリン血症となり、高血圧や高尿酸血症を招き、動脈硬化のリスクを高めるということになる。
 これまでのことをまとめれば、少食にして血中インスリン濃度を低く保てば、高血圧も糖尿病も高尿酸血症も動脈硬化も予防でき、ひいては長命につながってくるというわけだ。
 三つめのDHEA―Sが減らないというのはどういうことだろうか。
 DHEA―Sは抗老化ホルモンの代表で、コレステロールから体内でつくられるものである。大豆イソフラボンは骨粗鬆症、更年期障害によいとされているが、それ以外にも抗動脈硬化作用、抗肥満作用、抗糖尿病作用、抗高脂血症作用、抗腫瘍作用、さらには中枢神経系への作用も確認されているが、こうした多彩な働きをひっくるめて説明できるのは、大豆イソフラボンにはこのDHEA―Sを増やす働きがあるという事実によっている。DHEA―Sが抗老化ホルモンの代表といわれるゆえんは、これらの作用を全てもっているからである。
 ところが、DHEA―Sの分泌は二十代をピークにして、以後、直線的に減少していく。少食が長生きによいのはDHEA―Sが減らないことが役立っているのだろう。
 現代人はおしなべて、その運動量に比べ、食べ過ぎの嫌いがある。食べものを多く食べれば食べるほど、それを分解するのに、より多くのエネルギーが必要となる。そのうえエネルギー生産過程では活性酸素が多量に発生する。これをうまく処理できないとエネルギーづくりの工場ともいうべきミコンドリアが駄目になってしまうのだ。これが老化や病気の発生を促してしまう。
 ミトコンドリアでのフリーラジカル(活性酸素)の発生を低く抑えるためにも少食が大切になってくるのである。
 食べ物は我々の体に入って分解され、そのまま我々の分子になる。したがって、我々を形づくっている分子は自分のものであって、自分のものでない。
 シェーンハイマーが言うように、一瞬は留まっているけれども、我々の体の中を通り抜け、次の瞬間には別のところへ流れていく。それだけに食べ物にはどんなに気を使っても使い過ぎることはないのである。

冷たいものを出来るだけ摂らないようにする。

 冷たいものを飲むと胃腸は急速に冷やされる。すると身体は冷えた胃腸を体温の37度まで温めようとする恒常反応が働く。これに要するエネルギーはかなりのものとなる。そのため、たくさん飲めば、それだけエネルギーの要求量が高まることになる。
 冬バテという言葉がないのは、冬には温かいものを飲んだり食べたりするので、体温まで引き上げる余分なエネルギーが使われなくて済むからだ。
 冷えたものを摂り過ぎることのマイナス面はエネルギーの損失ばかりではない。腸を冷やすと腸扁桃(パイエル板)からとめどなく腸内細菌が体内に入って、白血球に取り込まれ、血液とともに身体中を巡ることが問題になる。
 しばしば歯周炎などを放置していると、ここから歯周病菌の感染が起こって、二次疾患である感染性心内膜炎や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)を引き起こすことがある。病巣感染と呼ばれるもので、元の感染巣は局所症状がごく軽いか、ほとんどないにもかかわらず、遠く離れた臓器には器質的な組織変化がみられるというものだ。
 虫垂炎なども病巣感染の原因の一つと考えられているが、実際はノドの扁桃腺と腸の腸扁桃での感染が最も問題となる。
 ノドの扁桃腺の問題は次の項目でとりあげるので、ここでは腸の扁桃を中心に考えてみる。
 ところで、多くの難病に対して温熱治療器やお灸などでお腹を温める治療をすることがあるが、それはお腹を温めることで血流を改善し、細胞の中のミトコンドリアを活性化して細胞を元気づけ、それぞれ固有の仕事を果たすようになるからだ。ミトコンドリアの活動は温度に左右されるのである。
 腸扁桃から侵入してこようとする腸内細菌を処理する白血球の食作用も、ミトコンドリアが十分に働いてくれなければエネルギー不足で処理できず、その細菌を抱え込んだままやがて静脈血に入り、身体中の血液を巡り、バイ菌が様々な組織や器官の細胞にばらまかれ、様々な病気をおこしてくるというわけだ。
 腸は最大の免疫組織といわれるが、それは人間の免疫機能の約60%が腸管に集まっていることによる。しかし、免疫を担う白血球が冷たいものを摂ることによって、その中のミトコンドリアが活動を弱めてしまえば、免疫作用は発揮されないことになってしまうのである。

 しばしば健康のためにと冷蔵庫で冷やされたヨーグルトをせっせと摂っている中高年の人をみかけるが、乳酸菌による整腸作用というプラス面と、腸を冷やすというマイナス面があって、その評価は意見がわかれるところである。
 そもそも有用菌を体外から入れても、腸内に定着することはほとんど無いと考えられていることからすれば、マイナス面のほうが多いように思う。
 さらにいえば、ヨーグルトは乳製品というところに別な問題が加わってくる。乳製品がはたして我々の健康に役立つのかということだ。
 このことを考えるには哺乳類の離乳機構から説明しなければならない。哺乳動物というのは体温が高く、生まれたての赤ちゃんの体温を維持するには高脂肪、高タンパクの栄養が要求される。それがミルクだ。それによってどんどん成長するわけだが、もし離乳体制ができないと子供はいつまでもオッパイにしゃぶりついて、自らエサを探す能力が発達しない。さらには外敵が来た時に子供がぶらさがっていると、親子ともども殺られてしまうので、子供のほうに離乳体制が用意されていて、自然に乳離れさせていくようになっている。
 この離乳体制はミルクに特異的に含まれる乳糖を分解する酸素ラクターゼの活性低下によって行なわれる。ラクターゼの活性は生まれた直後の新生児期にピークを迎えて、成長するにつれて急速に低下し、離乳期には大人と同じレベル、つまり殆どなくなってしまうのだ。
 ラクターゼの活性が落ちると、子供はミルクを飲むと乳糖が消化されないため腸内醗酵を起こしてお腹の具合が悪くなり、一人でオッパイから離れて自分でエサを探すようになるのである。
 ところで、乳糖はミルクにしかない糖であり、大人になってからは麦芽糖やショ糖のように必要な糖ではないことから、わざわざ離乳機構のために母乳に仕込んだと考えられている。
 我々東洋人、農耕民族は離乳機構が正常で、大人になればラクターゼ活性は低い。ところが進化の過程で、ラクターゼ活性が大人になっても高い人種が突然変異的に生まれた。ヨーロッパの白人と一部アフリカの人達である。哺乳類は本来が乳糖不耐性なのだ。
 こうしてみると、牛乳を大人になってからも飲むというのは、少なくとも東洋人にとっては生理学的に合わないことをやっていることになる。じっさい中国人は今でも、牛乳は乳幼児がのむ飲物であって、大人がのむものではないという認識がある。
 しかるに日本人は戦後のアメリカの政策によって牛乳信仰を植えつけられ今にまで至っている。
 牛乳信仰といえば、牛乳および乳製品はカルシウムの補給と、骨粗鬆症の予防になるからということで老人すすめられるのが一般的であるが、これも疑問がある。老人の骨折は日本のように牛乳をあまり飲まない国に比べて、牛乳をたくさん飲む北欧とアメリカのほうが4~6倍多いことを指摘しておきたい。
 さらにいえば、牛乳および乳製品を多く摂る国は、そうでない国に比べ、圧倒的に乳ガンや前立腺ガンが多いのである。そして、それまで牛乳や乳製品をあまり摂らなかった国が経済発展して食糧事情が良くなって、牛乳や乳製品を多く摂るようになってくると、それに比例して乳ガンや前立腺ガンが増えてくる。
 ミルクは新生児の特定の部位に働いて、その部分の成長と発達を促すために、たくさんのホルモンやホルモン様物質を高濃度に含んでいる生物活性の高い液体である。
 環境ホルモンについてはやかましくいうマスメディアが、どうしてか高濃度にホルモンやホルモン様物質を含む牛乳についてはほとんど問題視しないのは不思議だ。
 ミルクを飲むことによって新生児の細胞分裂が促進される。そのようなものを成長が終わった大人が多量に飲めばどうなるのか、素人的に考えても細胞分裂が盛んになる可能性が高まるはずではないのか。
 少し牛乳信仰に対して熱くなってしまったようだ。
 冷たいものは口当たりが良いものだから、冬でも暖房のよく効いた部屋でギンギンに冷えたビールをぐいぐい飲む人が多くなった。
 昔の人は「冷たいものを食べたり飲んだりするとお腹をこわす」といって腸を冷やすことは慎んでいた。こうした昔の人の知恵は経験から導き出されたものだけに、残しておきたいものである。

口呼吸に気をつけよう

 呼吸というものは、本来は鼻でするものだが、人間は言葉を獲得して喋ることを始めたことによって、口でも呼吸することが可能となった。
 西原克成先生は、「口呼吸は人間の構造的な欠陥の一つである」と主張され、口呼吸病という概念を発表された。
 ここでは口呼吸病とは具体的にどのような病気がそこに含まれるかを示そう。

目  ・・・・・・・・・・ 網膜症、ブドウ膜炎、シェーグレン症候群、
         ベーチェット病、緑内障、白内障
内耳 ・・・・・・・・・・ 耳鳴り、難聴、メニエール病、耳管閉塞
鼻とノド ・・・・・・ 鼻炎、扁桃炎
口腔 ・・・・・・・・・・ 口内炎、口腔乾燥症
肺  ・・・・・・・・・・ 喘息、肺気腫、気管支炎、肺炎
心臓 ・・・・・・・・・ 心筋症、心筋炎
血管 ・・・・・・・・・ 動脈硬化症、大動脈炎、レーノー病
筋肉 ・・・・・・・・・ 多発性筋炎、皮膚筋炎
肝臓 ・・・・・・・・・ 肝炎
消化管 ・・・・・・・ 腸炎、胃炎、クローン病、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎
皮膚 ・・・・・・・・・ 皮疹、湿疹、アトピー性皮膚炎、丹毒乾癬、ジンマ疹
皮下組織 ・・・・・ 膠原病、強皮症、全身性エリトマトーデス
指 ・・・・・・・・・・・ ヘバーデン結節、爪の炎症

といった具合だ。本来の鼻呼吸では鼻から吸った空気は鼻腔を通る間に空気中に漂う細菌やウイルスなどの有害物質が除かれ、適度に加温加湿されて酸素が吸収されやすい形で肺に送り込まれる。それに対して、食べ物の入り口である口で空気を吸うと、冷えて乾燥した空気がいきなりノドの
扁桃腺の温度を下げてしまう。そうすると、ノドに巣くっている好気性(酸素を好む)の細菌が扁桃のM細胞というところから白血球にとめどなく取り込まれ、体じゅうにばらまかれ、さまざまな器官や組織の細胞を汚染して細胞内感染症を発症する、というのが西原説である。
 その結果感染した細胞内のミトコンドリアが働かなくなって生命力の低下を招くというわけだ。
 感染した好気性菌はミトコンドリアの酸素を横取りしてしまう。ミトコンドリアの活性化には酸素は不可欠だから、それが好気性菌に横取りされれば、ミトコンドリアが働かなくなるのは当然であろう。
 では、ミトコンドリアが働かなくなれば、どうなるのだろうか。例えば、白血球ではその消化能力が奪われることになる。
 白血球に限らず、全ての細胞の働きは各細胞に存在するミトコンドリアによって遂行されており、それが細胞内に巣くった好気性菌によって、その働きが邪魔されてしまえば、健康が損なわれるのは当然といってもいいぐらいだ。
 ところで、年をとるとイビキをかくようになることが多いが、“たかがイビキ”と軽視してはいけない。急に大イビキをかくようになると、脳卒中の前ぶれかもしれないということで注意する医者もいるが、多くのイビキはさして気にもとめずに放ったらかしにされている。
 だがイビキをみくびっていると、体がバイ菌だらけになってしまうことさえあるのだ。口を開けてイビキをかいていると、ノドの温度が下がる。ノドの温度が1度下がると、扁桃腺のパイエル板から止めどなくバイ菌が入ってしまい、口呼吸病を引き起こすのである。
 しばしば口呼吸をしている人は鼻が悪いから口呼吸になるのだと言い訳をするが、これは逆であろう。鼻呼吸が可能な幼少の時に口呼吸をつづけてきた結果、口呼吸だけに頼らざるをえなくなって鼻を使わなくなることが鼻の機能低下を招いてしまったというべきである。
 どんな器官も、使わなければダメになる。廃用性萎縮というやつだ。筋肉など使わなければアッという間に細くなってしまうではないか。鼻も同じである。
 口呼吸の問題は扁桃組織にダメージを与えるところに問題があるのだ。
 扁桃組織を最初に発見したワルダイエルは「すべての病的現象はここから始まる」と主張したが、じっさい扁桃組織の重要性は想像以上なのである。
 では具体的に口呼吸を防ぐにはどうすればよいのか。我々は口輪筋鍛えれば、仰向けに寝た状態でも若い健康な若者のように舌が上アゴにペタッタとはりつくと考えている。ところが、加齢とともに舌筋の筋力は落ちてくるし、疲れた時や、アルコールを多飲した場合は、てきめんに舌はノドの方に落ち込んで気道をふさぐようになってしまう。そこで口の周りの口輪筋を鍛えると、それに連動して舌筋が引き上げられ、自然に口呼吸が防止できるわけである。
 口輪筋を鍛える方法はいくつかあるが我々は秋広良昭歯学博士が考案された「パタカラ」という器具をすすめている。毎日やれば確実に効果が出るものだがタダで出来る方法も紹介しておこう。
 それはみらいクリニックの今井一彰院長が考案された“あいうべ体操”だ。
 最初に大きな口を開けて「あー」と声を伸ばし、次に「いー」と口を横に広げて声を伸ばす。その次は「うー」と口をしっかりすぼめ声を伸ばす。最後に「べー」と、しっかり舌を口から伸ばして声を伸ばす。これで1セット。このセットを1日30回を目安に行うのである。できればお風呂の中でやるのが一番だが、鏡を見ながらやるのも良い。人前でやると、変な人に間違われるので、誰もいない所で、少しオーバーアクション気味にやると効果が出てくる。

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