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阿吽(あうん)の呼吸

 日常会話で「阿吽の呼吸」という言葉を聞いたことのある人は多いと思います。二人以上で何かをする時に、絶妙なタイミングで間合いがぴったりあい、お互いの呼吸があっている状態のことを言います。

 ただ「阿吽の呼吸」の意味は知っていても、「阿吽」とは何かを意識して、この言葉を使っている人は少ないと思います。

 「阿吽」とは、インドの古代の言葉であるサンスクリット語に由来があります。

 「阿吽」の「阿」は、サンスクリット語における最初の文字であり、「吽」は最後の文字です。そのため、密教では、「阿吽」を、万物の始まりと終わりを象徴するものとされ、「阿吽」という言葉自体に霊力があり、唱えることで祈りが通じるとされてきました。

 お寺の山門の左右に、仁王像が二体安置されていることがありますが、一方の仁王さまは口を開けた怒りの表情、もう一方の仁王さまは口を閉じて怒りを秘めた表情をしています。怒りの表情をしている仁王さまは「あ」という言葉を発している口の形をしていて、怒りを秘めた表情の仁王さまは「うん」という言葉を発している口の形をしています。

 つまり二体の仁王さまが組で「阿吽」、すなわち万物の始まりと終わりを象徴すると考えられているのです。

 そのため口を開けた仁王さまは「阿形像」、口を閉じた仁王さまは「吽形像」と呼ばれています。

 二体の像の口が「阿吽」の形をしているのは、仁王像だけでなく、金剛力士像でもよく見られます。また神社の狛犬の口も阿吽の形をしていることが多く、仏教の影響が神道にまで浸透していることがわかります。

 「阿吽の呼吸」という言葉は当初、息を吐く時に口が「阿」と言っている形になっていて、息を吸って口を閉じる時に口が「吽」と言っている形になっていることをから、息を吸って吐くことという意味で使われていました。

 それが現在使われているような意味で使われるようになったのは、実際に、お互い息を吸って吐く呼吸をあわてタイミングをはかることが少なくないことからであります。例えば相撲の立ち会いでは、二人の力士が息を吐いた後、息を吸った状態で止めて、タイミングをあわせているそうです。

 そうした状況でタイミングを合わせることことから、息のあった行動を「阿吽の呼吸」と言うようになったのです。

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