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長者(ちょうじゃ)

画像:現在のサンガーマーラ(祇園精舎)

 「長者」という言葉、普段の会話で使うことはあまりありませんが、昔話などにはよく出て来る言葉です。お金持ちのことを言いますが、単なるお金持ちではなく、人徳も兼ね備えた人のことを言います。
 もともとは仏教語で、仏教を支える資産家のことを指しており、お経にはたくさんの長者さんが出て来ます。
 平家物語の冒頭に「祇園精舎の鐘の声」という一節があります。祇園精舎とは、お釈迦さまが二十年以上にわたって、そこで教えを説いたと伝えられている僧院(お寺)のことですが、この祇園精舎をお釈迦さまに寄付したのはスダッタという長者でした。
 スダッタ長者は、もともと身寄りの無い人などに施しをする篤信の人でしたが、お釈迦さまにの説法を聞いてこれに感激し、お釈迦さまが教えを説くための寺院を寄付したいと思うようになりました。
 そしてそれにふさわしい土地が見つかったのですが、土地の所有者であるジェータ太子が、いくら頼んでも譲ってくれません。しまいには「土地に金貨を敷きつめた分だけ譲ってやろう」と意地悪を言い出しました。
 ところがスダッタ長者は、金貨を敷きつめ始め譲って欲しいと言った土地をすべて金貨で覆ってしまったのです。
 ジェータ太子は、スダッタ長者のお釈迦さまへの思いに驚きました。そして改心して、その土地を譲っただけでなく、自ら森の木などを寄付して、祇園精舎の建設を助けたと言います。
 こうして祇園精舎ができあがり、お釈迦さまはそこで多くの人に教えを説いたということです。
 仏教が生まれる時には、スダッタ長者のような篤信の信者たちが、大きな役割を果たしていたのです。
 繰り返しになりますが、長者は単なるお金持ちのことではありません。人徳を兼ね備えてこその「長者」です。現代の私たちも、そのことを忘れずに生きていきたいものです。

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