1. HOME
  2. 連載記事
  3. 仏教ものしり講座
  4. 会釈(えしゃく)

会釈(えしゃく)

近所の人などで、お互い顔を知っているくらいの人とすれ違う時など、軽く会釈を交わすということは少なくありません。また同じ職場の同僚などで、一日中いっしょに働いている人と廊下ですれ違う時なども、いちいち挨拶をせずに、会釈で済ますことも多いでしょう。

 軽く頭を下げるとか、軽く微笑むとか、目線を交わすとか、会釈にもいろいろありますが、「どうも」「また会いましたね」「こんにちは」など、その根底にある親しみの気持ちは共通しています。

 会釈という言葉は、もともと仏教語の「和会通釈(わえつうしゃく)」の略語です。会釈の他にも、会通(えつう)と略すこともあります。

 仏教には、数多くのお経があり、様々な教えがあります。その中には、相矛盾するものも多く、そうした異説があることをどう説明するかが、しばしば問題になります。

 しかし仏教では、こうした異説を相互に照らし合わせ、相違点を掘り下げ、その上で、根本にあるものを探ることで、矛盾を超えた真実を探るという考え方があります。

 このことを「和会通釈」と言うのです。

 現代でも、政治や経済、あるいは日常の生活においても、様々な議論があります。意見というものが完全に一致することは稀で、時には人間関係までギスギスしてしまうこともあるようです。

 ただ、どんな意見も、ものごとを良い状態にしていこうという気持ちについては、共通するものがあります。そのことに気づけば、意見がどんなに違っても、その根っこは同じところにあるという結論に達するはずです。

 それに異なる意見であっても、よく話を聞いてみると、納得できる部分も少なくないはずです。どんな意見でも、相手を尊重することは大切なのです。

 人と人が会釈を交わすということは、相手のことを認めることでもあり、相手のことを大切に思うことでもあります。

 会釈を心がけることで、いろんな人間関係がうまくいくようになるはずですし、ひいては社会そのものが平和なものになっていくと思います。

関連記事