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相続(そうぞく)

 相続という言葉からは、ほとんどの人が「遺産相続」のことを思い浮かべるでしょう。相続とは一般的に、親が亡くなるなどして、財産などを受け継ぐことを言います。
 ところがこの相続という言葉、元々は仏教語として別の意味で使われてきました。
 仏教では、この世の中で起きていることは、すべて一瞬一瞬、生まれては消えていると考えます。例えば、ろうそくに灯された炎は、ずっと同じものが燃えているように見えますが、実は、一瞬にして燃え上がり、一瞬にして燃え尽きて、その直後にまた別の炎が燃え上がり、ずっと絶え間なく生滅を繰り返しています。
 このように生まれては消え、生まれては消えということが続いていくことを、仏教では相続と言うのです。
 こうした見方は、この世のすべてのことがらは、ずっとそこにあるように見えて、実は儚いものであることを教えてくれます。すべてのことは、生まれては消えることを繰り返しており、諸行無常であるのです。
 この、生まれては消えということが続くのは、人間も同じです。人は生まれ、死んでいきます。そして命はその子どもらに、受け継がれていきます。
 このことから転じて、財産を受け継ぐことを相続と言うようになったのです。
 最近は、どうも遺産相続でもめる家が増えているようです。特に兄弟で、これまで親から受けてきた恩恵に差があったりした場合、あるいは誰かひとりだけが親の介護をしていた場合などに不公平感が残り、それが原因で揉めることが多いようです。
 でも考えてみれば、財産も永遠のものではありません。まさに、生まれては消えていくもの、無常なものです。
 ただ、私たち凡人は、そうした無常なものである財産に目がくらんでしまいがちです。
 平家物語の冒頭にあまりにも有名な一節があります。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。

 この一節は、平家が滅びたように、盛者必衰、栄えている者は必ず衰えていくということを説いています。
 しょせんすべては、生まれては消え、生まれては消えを繰り返しているだけなのだから、そうしたものに捕らわれないで生きていくほうが、幸せになれるよと、仏教は教えてくれるのです。

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