醍醐味(だいごみ)
インドの乳製品「醍醐」
「推理小説の醍醐味は謎解きだ」「映画の醍醐味を味わった」などという使われ方をする「醍醐味」という言葉。ものごとの本当の面白さや深い味わいのことを言いますが、仏教語としても使われ「最上の教え」のことを意味していました。
もともとはインドの発酵乳製品のことを「サルピルマンダ」と言い、それが「醍醐」と訳されました。この「醍醐」が「最高の美味」であることから、「最上の教え」という意味に転じていったのです。『大般涅槃経』という教典では、教えを、「乳」「酪」「生酥(しょうそ)」「熟酥(じゅくそ)」「醍醐」という牛乳の発酵段階に例え、『涅槃経』が最後の最も美味しい醍醐にあたることが述べられています。
インドでは肉食をしない人が多く、動物性タンパク質が不足するため、それを牛乳で補っており、特に発酵させて食べることが好まれていました。醍醐が、実際にどのようなものだったのかはわからなくなっていますが、現在で言うチーズのようなものだったのではないかと言われています。日本でも醍醐が食されていたという記録があるのですが、残念ながら、これもどのような食品だったのかはわかっていません。インドの醍醐との関連性もわからないようです。
ちなみに、発酵段階が醍醐のひとつ前の熟酥は、サンスクリット語(インドの古語)でサルピスと言いますが、このサルピスとカルシウムの「カル」を組み合わせて「カルピス」という乳製品の名前が生まれたそうです。
カルピス社の創業者・三島海雲氏は僧侶でもあり、新商品にどうしても仏教由来の名前をつけたかったようです。実は、「サルピルマンダ(醍醐)」が最高の味を意味することから「カルピル」と命名しようとしたのですが、「赤とんぼ」などで有名な作曲家・山田耕筰氏(1886~1965)に相談したところ、「カルピル」は歯切れが悪いとの助言を受け、「カルピス」という名前になったそうです。この「カルピス」がその後、国民的大ヒット商品となったのは周知の通りです。