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お地蔵さん(おじぞうさん)

「方丈さん、こんにちは」
「おお、太郎くん。今日もいい天気だね」
「うん、とても気持ちいいや。今日はね、おばあちゃんが、あそこのお地蔵さんにお参りするのに付いてきたんだ」
「おばあちゃんは、ほんとうに信心深いねえ」

子どもをまもるお地蔵さん

「方丈さん、お地蔵さんって、どんなお方なの?」
「そうだなあ、ひと言で言ったら、子ども達をまもってくれるお方ということだな。太郎くんも、お地蔵さんにまもってもらっているんだぞ」
「そうなの?」
「お地蔵さんは、仏さまの世界でもとても高い地位の方なんだけど、『すべての人が救われるまでは戻らない』と誓って、救済の旅を続けていらっしゃるんだ。特に子どもとか、弱い立場の人をまもってくれるのが、お地蔵さんなんだよ」
「だから、僕もまもってもらってるんだ」
「そうだよ。だからお地蔵さんは、とても人気があるんだ。太郎くんの家の近くにも、お地蔵さんがいらっしゃるだろう」
「うん、いるいる。お地蔵さんが六人ならんでいる」
「お地蔵さんは、ほんとうに人気があるから、日本中のあちこちに、ああやってお祀りされているんだよ」
「そうなんだ」

賽の河原の子どもたち

「それから人を救ったっていうお話も、お地蔵さんにはたくさんあるな」
「どんな話?」
「賽の河原って知ってるかい?」
「聞いたことはあるよ」
「この世とあの世の境にある三途の川の河原を、賽の河原と言うんだけどね、そこでは、親より先に死んでしまった子どもたちが、生きているうちにできなかった親孝行をするため、河原の石を積んで、塔をつくっているんだ。塔を建てるのは、とても功徳があると言われているからね。でも時々、悪い鬼たちが来て、子ども達が一生懸命にたてた石の塔を壊してしまうのだよ。それを知ったお地蔵さんは、賽の河原に行って、鬼たちから子どもを守ってやるんだ。そして、教えを説いて、子どもたちが成仏できるよう導いてくれるというわけさ」
「へえ~、正義の味方だね。お地蔵さん」
「そうだな。正義の味方だな。特に、幼くして亡くなった子どもや、流産で生まれてきた子どもなんかを、お地蔵さんは救ってくれるのさ」
「そうなんだ」
「『一重積んでは父のため、二重積んでは母のため』って歌を知っているかい?」
「ううん、たぶん知らない」
「賽の河原で、子ども達を救うお地蔵さんの歌なんだよ」
「へ~、そんな歌まであるんだ」

遊びで彫ったお地蔵さま

「それから、こういう話もあるよ。昔、琵琶湖の近くの三井寺というお寺に、浄照さんというお坊さんがいたんだけど、浄照さんが子どもの時、遊びでお地蔵さんの木像を彫ったことがあったんだ。子どもが彫ったものだから、もちろんいい加減な木像だったんだけどな。でな、浄照さんは、大人になったら、出家してお坊さんになるんだけど、三十歳のときに、病気になって死んでしまったんだよ。それで、あの世の入り口に行って閻魔さまの前に引きずりだされるんだ。その時、一人の小僧さんが現れて、『私は、あなたが子どもの時に彫った地蔵だ。おまえを助けてやる』と言うんだよ。そして閻魔さんに『この者をまだ生かしてやってくれ』と頼むんだ。その瞬間、浄照さんは生き返ったというわけさ」
「生き返ったの?」
「そうさ、お地蔵さんというのは、ほんとうに功徳のある方なんだ」
「すごいや地蔵さま!」
「太郎くんも、手をあわせると、テストの成績が上がるかもな?」
「ほんとー? じゃあ、ちょっと手をあわせてくるね。ありがとう、方丈さん」

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