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お盆供養(おぼんくよう)

方丈さん こんにちは!」
「太郎くん、いらっしゃい。よく来たね」
「この間は、ありがとうございました。方丈さんに聞いたお話を、レポートにしたら、先生にほめられたんです。それで、またお話しを聞こうと思って」
「そうかい、それはよかったね。じゃあ今度は何のお話しをしようか?」
「おばあちゃんがね、今度はお盆のお話しを聞いたらどうか、って。なんかおばあちゃんも、お盆の供養はずっとやってきたけど、これまでお盆の意味とかは、あまり考えたことは無かったんだって」
「そうか。それじゃあお盆の話をするから、こっちでお茶でも飲みながらにしよう」
方丈さんは、太郎くんを客殿に案内して、お話しを始めました。

ご先祖さまの霊をお迎えする

「お盆というのはな、ご先祖さまの霊をこの世に迎えて、供養をする行事のことを言うんだ」
「ご先祖さまの霊が来るの?」
「そうだよ。寳泉寺では8月の13日から16日までの4日間がお盆なんだけど、最初の13日の朝には、家の前で迎え火を焚(た)いて、ご先祖さまの霊をお迎えするんだ。オガラって知っているかい? この時期になると、スーパーマーケットなどで、藁(わら)みたいなものを売っているんだけど、そのオガラを焚くんだよ」
「そういえば毎年、おばあちゃんが門の前で燃やしているよ」
「そうそう、それが迎え火なんだ。最近ではやる家が減っているけど、太郎くんの家ではちゃんとやっているんだね」
「うん」
「それで迎え火を焚いてから、ご先祖さまの霊をお墓まで迎えに行くんだよ。そうしてお盆の間、家にいていただくんだ。そしてご先祖さまに感謝しながら、供養をしてさしあげるのが、お盆なんだ」
「へえ~」
「地方によっては、お墓からご先祖さまをお連れした後、またお墓にお参りに行って、お墓をきれいにお掃除するような習慣のあるところもあるんだ。留守参りと言うんだけど、ご先祖さまがお墓に気持ちよく戻れるようにするんだよ」
「ご先祖さま、喜ぶね」
「それからその時期には、お寺に檀家の人が集まって、盛大に供養を行うんだよ。お寺にたくさんの人が集まって供養をすることは、参加する人にとっての修行の意味もあるんだ。そうやって、仏教と親しむことで、より信仰を深めていくんだよ」
「そうなんだ」
「去年は太郎くんも、ここのお盆供養に来たろう」
「うん、たくさんの人が来ていたね」
「そうそう。寳泉寺の人たちは、ほんとうに熱心で、お盆供養をきちんとする人が多いんだ。それから太郎くん、盆踊りは知っているだろう」
「うん」
「盆踊りはね、お盆が終わる16日にやるんだけど、ご先祖様がお戻りになるのに寂しくないよう、みんなで踊り、先祖さまにも楽しんでもらってお帰りいただくためにやるんだよ」
「へえ~、そうなんだ」

目連の苦しみ

「この間、お施餓鬼(せがき)のことを話した時に、阿難(あなん)さんのお話しをしたのを憶えているかい?」
「うん」
「お施餓鬼は、阿難さんのお話がもとになった行事なんだけど、このお盆はね、やっぱりお釈迦さまの弟子である目連(もくれん)さんというお方のお話がもとになっているんだ」
「もくれんさん?」
「そう。目連さんは、神通第一と言って、普通の人には無いすごい能力を持っていたんだけど、ある時その力で、亡くなったお母さんがどこにいるのかを探したんだ。そしたら、なんとお母さんが餓鬼道(がきどう)に墜(お)ちて、苦しんでいるのがわかったんだよ」
「餓鬼道って、この間、方丈さんが言っていた恐ろしい場所?」
「そうなんだ。餓鬼道にいるお母さんは、喉(のど)を涸(か)らして、飢えていたんで、目連さんが神通の力で、水や食べ物を餓鬼道のお母さんのところに送ったんだけど、お母さんの口に入る直前にみんな炎となってしまったんだ」
「え~、かわいそう」
「それで目連さんは悩んでしまったんだ。悩んだ末にお釈迦さまのところに行って、どうしたらいいかを相談したんだよ。するとお釈迦さまは、目連さんにお母さんを救う方法を教えたんだ。インドでは雨期にお坊さん達がお寺にこもって修行をする安居(あんご)というのがあるんだけど、その安居が終わる日に、お坊さんたちにたくさんの食べ物の供養をしなさい、と目連さんに言ったんだ。目連さんはその通りに実行すると、お坊さんたちに備えた食べ物が餓鬼道で苦しんでいる者たちの口にも行って、お母さんの口にも入ったというんだ」
「目連さんのお母さん、よかったね」
「そう、それで目連さんのお母さんは苦しみから解放されたんだよ。安居が終わる時期というのが、ちょうどお盆の時期で、餓鬼道で苦しむ人たちを救うために、お盆供養が始まったんだ。それが今では、すべてのご先祖さまを供養するために行われるようになったんだ」

ご先祖さまに感謝

「太郎くんは、お父さんとお母さんから生まれたろう」
「うん」
「そのお父さんとお母さんは、おじいちゃんとおばあちゃんから生まれたんだ」
「うん」
「おじいちゃんとおばあちゃんも、そのお父さんとお母さんから生まれたんだ」
「うん」
「人の命というのはな、そうやって、ご先祖さまがいらっしゃったからこそ、今あるんだ。太郎くんも、たくさんのご先祖さまのおかげで、今こうやって生きているんだ。だから、ご先祖さまには感謝しなくちゃならないんだよ」
「うん」
「お盆というのは、そのためにあるんだ。大切なご先祖さまに感謝し、自分が今こうやって生きていることに感謝する。お盆にお寺に来た時には、それを忘れないでね」

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