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お釈迦さま(おしゃかさま)

画像(釈迦十六羅漢図)提供:東京国立博物館

「方丈さん、こんにちはー」
「おう、太郎くん。いらっしゃい。今日は、学校の帰りに寄り道かい?」
「うん、友達の家に寄ってきたんだ。ちょうど帰り道だったので、お寺を通って帰ろうと思って」
「せっかく来たんだから、お参りをしてきなさい。ほら、本堂にあがって」
「う~ん。方丈さんが言うなら、仕方ないや」
「ほらほら、靴を脱いで。ここで手をあわせて、『なむしゃかむにぶつ』って言うんだよ」
「なむしゃかむにぶつ」
「そうそう、偉いぞ」

南無釈迦牟尼仏

「方丈さん、『なむしゃかむにぶつ』って何?どういう意味?」
「うん? そうか意味か。あのな、『なむ(南無)』って言うのは、帰依します、って意味。そうだな、あなたを信じます、あなたに手をあわせます、と言った意味だな」
「うん」
「『しゃかむにぶつ(釈迦牟尼仏)』というのは、お釈迦さまのことだよ。ほら、本堂の真ん中にいらっしゃるだろう。あの本尊さまは、お釈迦なんだよ」
「お釈迦さま。よく聞くけど、どんな神さまなの?」
「神さまか? あははは、神さまじゃないよ、仏さま。それにな、お釈迦さまは、仏さまだけど、2500年前のインドに本当に生きていた人間なんだよ」
「えっ!? そうなの? 人間なの?」
「そうだよ、人間。インド人さ」
「そうなんだ」
「当時のインドには、たくさんの国があったんだけどな。シャカ族が治めている小さな国があってな、そこの王様の子ども、つまり王子様だったんだ。お釈迦さまの名前は、ゴーダマ・シッダールタなんだけど、シャカ族の聖者ってことで、『釈迦牟尼』と呼ばれ、それを略して『お釈迦さま』と呼ぶようになったんだよ」
「王子様なんだ」

悲劇の生い立ち

「そうそう。でもな、かわいそうなことにな。お釈迦さまを生む時にな、お母さんのマーヤーさんが亡くなって、お釈迦さまは、お母さんの妹に育てられたんだ。妹さんは、愛情を込めて育てたんだけどな、やっぱりお釈迦さまはな、お母さんに会いたかったんだな。いつも寂しそうにしていたんだ」
「かわいそうに」
「ある時、お釈迦さまがね、お城を出て街に行ったんだけど、そこで老人と病人と死者を見たんだ。それまでずっとお城の中にいたんで、そうした人間のつらく悲しい姿を見たことがなかったんだな。お釈迦さまは、とてもショックを受けてしまうんだよ。そしてその後に、お坊さんの姿を見たんだな。それでお坊さんの生き方にあこがれてしまうのさ」
「真面目な人だね」

悟りを得る

「でも、お父さんの王様は、お釈迦さまがお坊さんになるのには大反対さ。そりゃ、お釈迦さまがお坊さんになってしまったら、跡継ぎがいなくなってしまうからね」
「で、どうしたの?」
「結局、お釈迦さまは、お城を出てしまうのさ。『この世界の人々の苦しみを無くしたいってね』。それで、何年も放浪しながら、厳しい修行をするんだよ。でも、何年修行しても、苦しみを無くす方法が見つからないのさ。それで、厳しい修行をやめてしまうのさ」 「やめちゃうの? それでどうなったの?」
「菩提樹の下で、静かに座って瞑想をするのさ。そうして、七日目のこと、突然、お釈迦さまは、悟りを得るんだよ」
「悟り?」
「うん、この世の中の、永遠の真理がわかった、ということかな」
「ううん?」
「なかなか説明は難しいな。だから、それを知りたくて、たくさんの人がお釈迦さまのところに集まってくるんだよ。仏教というのは、そのお釈迦さまの得た悟りを、みんなが得るためのる教えなんだよ」
「そうなんだ」
「お釈迦さまはね、当時の人としては、ほんとうに長生きで、80歳まで生きたんだ。何十年もかけて、たくさんの人を導いたんだよ。そして、その教えはあまりにも素晴らしかったので、2500年後の今でもお釈迦さまの教えを信じる人がたくさんいるんだよ」 「すごいんだね」
「今日は、ちょっと難しかったかな。でもね、そんな難しいことは解らなくても、この本堂で、お釈迦さまに手をあわせるだけで、ありがたい功徳があるからね。今日は、もう一度、手を合わせてから帰るんだよ」
「うん、なむしゃかむにぶつ」
「そう、偉いな。もう憶えたのかい?」
「うん、方丈さん、ありがとう。お釈迦さま、ありがとう」

寶泉寺の宝物:釈迦涅槃図
仏教のことば:釈迦涅槃図

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